中部経済新聞 研究現場 発

1l並列クラスタ演算による複雑システムの知的ロバスト制御
効率が良い設計手法を開発 未知のダイナミクスへ挑戦
ロバスト制御理論とよばれる制御工学の一連の理論がある。『ロバスト(Robust)』とは『堅牢な』という意味であり、この言葉が示す通りロバスト制御とは、制御対象に不確かさがあっても、安定性や性能を損なわない堅牢な制御を実現するための体系的な理論に基づく制御方法である。
近年、制御工学が対象とするシステムは、未知環境で自律的に動作するロボットシステムから、情報技術に基づいて電力ネットワークを制御するスマートグリッドまで、急速の規模と複雑さを増しており、複雑な未知のダイナミクスを有するシステムに対しても有効で効率が良い知的ロバスト制御系の設計手法が求められている。
知的ロバスト制御の設計において、複雑システムに対する性能評価で重要になるのは、やあり設計の保守性である。本来は必要十分条件に基づいて制御系を設計するべきところを、実用上の様々な制約により、十分条件しか用いる事が出来ない場合に、十分条件のみに基づいてコントローラの設計を行うことで、この保守性が発生する。従来の制御系設計では、保守性にはある程度の目をつぶり求解性を重視して制御系設計を行う事が多く、保守性について全く検討が行われない場合が存在する。
我々の研究室では、フォワードコンパチビリティに優れたBeowulfクラスタ計算機によるクラスタ演算や、多数のコアのGPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)によるクラスタ演算を用いて、パラメータの字数を高次元化する代わりに変数領域の分割数を増やす部分領域法のアイデアに基づいて保守性を解析・評価し、これを可能な限り低減化する独自の研究を行っている。
この研究テーマは、文部科学省科学研究費補助金における複数年のプロジェクトの課題として最近10年間で3度にわたり採択され、継続的に多大な支援を受けて進めることができており、ここに改めて記して、謝意を表したい。
今後も、ロバスト制御における保守性の解析・評価と低減化を中心として、保守性が低く効率の良い設計手法を開発し、て実システムへと展開し、複雑システムの未知なるダイナミクスを高度に制御できる知的なロバスト制御手法の研究をさらに進めることが目標である。

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